「せとか」の栽培記録
東京での仕事は食品関係だったのですが、生鮮品にはあまり縁のない部門でした。とはいえ、高級ミカン「せとか」はさすがに知っていました。「せとか」が濃厚で美味しい事も。皮も剥きやすかったし、好きなミカンでしたね。
そういうわけで、奄美で園芸を始めたとき、真っ先に植えて育ててみたいと思ったミカンが「せとか」です。
「苗を植えて何年か待てば、あの美味いミカンが実るのだ」
単純といえば単純ですが、何も知らない人間はそんなものです。
昨年(20年)の早春、2年生のせとか苗木を植えました。
このせとか苗、2年生にしては貧弱なような気がするし、根も細根が極端に少ない。
それまでミカン苗の根とか見たこともなかったので、経験から比較するとかではないんですが、同時に購入した他のミカン苗に比べて明らかに根が貧相なのです。
「ハズレを引いたわい」
ですね。
通常なら返品してますが、生き物でもあるし、もう面倒で。結局植え付けました。
「今は貧弱だが植えてしばらくすれば急速に生長して立派になるだろう。たぶんそうなのだろう。ミカンとはそういうものなのだ!」
なんの根拠ないのに(笑)
自分を誤魔化すような思考回路に末に、そのまま育てることにしました。
ところが次々と萌芽する他の苗を横目に、「せとか」だけはピクリとも動きません。三ヶ月経過しても息をしてる気配なし。
葉は瑞々しさを失い黄変して落ちていくにのに、新たな芽が出てくる気配もない。(肥料は与えています)
このまま枯死させるのはあまりに悔しいので、枯れる前に枝を取って接ぎ木にしました。
そして7月、親株は鉢に移し家に持って帰りました。
これが正解だったようです。
一ヶ月後の8月、まだ生きている事を新葉で主張する「せとか」
なんとか育ちそうな感じになった「せとか」
このまま庭で養生し、枝葉を増やしそれなりの樹冠を形成したら、畑の元の場所に定植してやろうと思っています。今度こそスクスク育つでしょう。
何気なく「ミカン」と書いていますが、「せとか」は所謂ミカンではありません。日本でいう「みかん」は温州みかんを指していて、温州以外は「雑柑」。もう少し広範囲に「カンキツ」といいいます。
「せとか」は中晩柑の柑橘類で交雑種に分類されます。オレンジとミカンのいいとこ取りが成功した品種で、見た目良く皮が薄く食べて美味しいという、値の張るカンキツとして知られます。ミカンの大トロだとかミカンの女王とかいうことも。
そういう事ですが温州も交雑種もミカンはミカン。
煩わしいのでブログではすべてミカンと書くことにします。
「せとか」は食べる方には優れたミカンですが、栽培する方にとっては「皮が薄いのは食べやすいけど日焼け・霜焼けしやすいし病気に弱い」「鋭いトゲが育成の邪魔にしかならない」「幼木・若木のころ樹勢が弱く葉が増えにくい」と、かなり気難しい品種です。
まあ難しいぶん実がなった時は嬉しさもひとしおだろうと、そういう気持ちで育ててみます。
せとかミカン その後
まあまあ育ったせとか。
このまま鉢栽培しても、すぐに根が詰まるだろうし、その対処のため枝を減らし小さく育てないといけない。
そんなこともあり地植えにします。
最初に植えた場所は接ぎ木にしたクローンせとかが元気に育っているので、この親せとかは庭の隅に定植することにしました。
翌春、かなりの花が咲きましたが、まだ木が小さいのでほとんどを摘花して、数個だけ実にすることに。
うまく熟して美味しいせとかミカンになりますように。