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初心者の果樹剪定と道法スタイル

『津之輝』ミカン栽培

初心者の果樹剪定

まったくの素人ながら、園芸を始めてからいつの間にかもう三年目に。

書籍やネットを頼りに農業・園芸の知識を吸収して果樹などを育成。得た知識を実践しながら「なるほどなあ」「こういうふうに育てないといかんのか」

そうしつつも心の中で「なんだろうな」「なにか違うような気がする」「でも教科書的にやるべきなんだろう。僕はシロウトなんだから」

先人達の慣行を黙って真似しながら、「う~ん」と疑問になってしまう事柄の代表が「肥料」「農薬」そして、「剪定」と「誘引」

果樹で剪定・誘引といえば、「木を上に伸ばしてはいけません」「横に広げた方がよろしい」「徒長枝は必ずちょん切るように!」
どこの指導でも必ずそうなってるので、そうしてます。

でも僅か数年ですが、植物を観察してると「元気の良い枝はとにかく上に向かって立ち上がる」んですね。これを「邪魔にしかならない」という固定観念(教え)でバッサバッサ切るわけで。

「これなんか変じゃないのか」「木が成長したがってるのに邪魔をしてるわけで、これで木を健康に育てていると言えるのかな?」

疑問はあれど、シロウトだし経験の深い人からは一蹴または一笑に付されてしまうだろうなと。

「肥料」「農薬」にしても、まず「なんでこんなに金がかかんの!」「おかしくないか」「これだけ金使って本当に見合った収穫があるんだろうか」

でもあらゆる「教え」によれば、そうしないと美味しい果物など出来るわけがないと、だいたいはその方向。

「う~ん」と思いつつも「そうしないと駄目なんだ」と慣行を踏襲していました。

道法スタイル

そして最近になって『道法スタイル』を知り、驚愕。
僕の「モヤモヤ感」すべてが氷解してしまう程の衝撃。

遅まきながらというか、「いまさらかよ!」と思う方もいるんでしょうが、僕はネットを含むメディア全般をあんまり見ることがないので今頃になって知ったのです。

『道法スタイル』というのは、
「肥料も農薬もいらん!」「横へ誘引するな!」「立ち枝を切ってはいかんでしょ!枝を立てないと話ならんよ」
簡単に言えばそういうスタイルです。

なぜそうなるのか?
核心は「植物の成長はホルモンが左右する」ということで、栽培する者は「余計なことを」せず植物ホルモンのバランスを整えるだけで良いと。このへんは少しだけ専門的な話なので、道法先生の本などで直接確認したほうが良いと思います。

元農協指導員の先生、しかも実践で証明しておられる人がそう断言してるんですから、これはもう感動モノというしかないですね。

既得権と中間マージンとボッタクリで成り立っている現在の日本で、上記のような発言をすれば(しかも農協という組織の中にいて)、どれだけ激しい反発と圧力があったのか想像に難くない。

それらを跳ね除けて持論を証明しながら理解者を増やし続けた。まさに信念・理念、勇気と行動力の鬼みたいな先生です。

そしてその理論は水の流れのように自然で、淀みなく矛盾がなく理解しやすく簡単で、思いきり理にかなっているのです。

これまでの植物栽培についてまわったモヤモヤ感が、すべて吹き飛ぶような、霧が晴れるかのような納得感。素晴らしいとしか言いようがない。

初心者と道法スタイル

遅まきながらと言いましたが、三年目で『道法スタイル』を知れたのは幸運だったのかも。3年だと果樹はまだ幼木のようなものだから、やり方を変えるのにそれほど苦労しない筈だからです。

もちろん今後は『道法スタイル』を真似してみるつもりでいます。

だって成功すると農薬や肥料と縁が切れるんですよ!(バカ高価い除草剤とも)

それでもし美味しい果実ができれば最高です。専業ではないのでリスクもないし、やらない理由がない。

苗木が弱いうちは無農薬は無理だと思いますが、「垂直仕立て」「弱肥料からやがて肥料なし」はすぐ実践できそう。

幸いにも僕がメインにしたい柑橘「津之輝」は開帳性ではなく直立したがりの木。自然に枝が立つので丁度良いかも。

『道法スタイル』、既にご存知の方が多いでしょうけど、もしも知らなかったりする人がいたら是非この機会に読んでみると良いですよ。

道法スタイル Amazon

僕の個人的な感想を書いておきます。

『道法スタイル』の概要は、「与えられすぎて逆に駄目になっていた」という解釈も可能でしょう。

僕の頭に浮かんだのは、魚山人さんが折に触れて手前板前に書いていた、「食の過剰が現代人を蝕んでいる」という話。

大昔の人達は若くして疫病等で命を落とさず成人した者は異常なくらい健康であった。現代人とは比較にならないほど頑健で体力があった。

現代と比べると非常に貧相で栄養のない食事をしているのにパワーがあった。

女は数百キロの米俵を持ち上げて運び、男は江戸から今の千葉や静岡までトップマラソンランナーを上回る速度で駆けた。剣士は青竹を握力で破壊できた。

ごく普通の人でも山道を何十キロも苦もなく歩く。

それに比べて今の人間は病的なほど脆弱である。
背も伸びたし体力も向上したのに、それは見かけだけで中身は「弱い」のだ。

日本人の寿命が伸びたと喜ぶ者は、医療と福祉の現実を何も知らない人だけだろう。ただ無理やり生かされているだけでは生きているといえない。過食ではおそらく寿命も短くなっていくし、食を減らせば健康で長生きできる筈だ。

「与えられすぎ」が脆弱さの最大の理由であろう。
「食べ過ぎ」と「過保護」が現代人をひ弱にしている。

「食べ過ぎて体内の栄養バランスを崩しているのだ」

手前板前

そういう内容です。
よく似てると思いませんか。人間か植物かの違いはあれど、「生物」としては同じ。

過剰が健康な生育を阻害していた。

「肥料の与えすぎがミカン(作物)を不味くし、無理な枝曲げと薬剤散布で自分の身を守るホルモンを出さなくなっていた」

断捨離というかシンプルに戻るというか、植物もやはり過保護は駄目だったのだろう。そんな感想です。

正直言って初心者に『道法スタイル』は困難だと思います。特にいきなり無施肥無農薬というのは無謀ですね。

道法スタイルの実践は経験豊富なベテラン営農者さんに適しているのではないでしょうか。

道法さん自身が経験を積んだベテランなわけで、玄人だからこそ道法スタイルを確立できた。いくら斬新で独創的なスタイルでも農業スキルが未熟では形になっていないはず。

どちらにしても道法スタイル実践は段階を踏みながら行うことが求められるのではないか。

果樹苗木の剪定 初心者の迷い

画像は冬剪定待ちの育苗期スモモ(貴陽)

真冬の剪定で画面右の主枝下部から生えている第一亜主枝のような主枝と競合してる(養分を奪い主枝を太くする邪魔になっている)枝を間引き、その他の枝も切って丸裸になる予定です。第一亜主枝はもう少し主枝を太くしてから育成しても遅くない筈。

この画像は衰弱して今にも枯れそうなミカンの苗木です。

落葉樹でもないのに、冬でもないのに、葉がほとんど落ちています。

害虫や病気とかじゃなくて、自然に樹勢が衰えました。植えてから約一年目の温州ミカン。

こうなった原因は、おそらく植えた場所が悪かったから。水路に近すぎて豪雨の時に水が溢れ、根回りが水流で川のようになってました。

でもそれだけが原因というわけじゃなさそうです。

他にも色々な要因があり、そのなかでも「剪定の失敗」が大きいでしょう。

いや、まだ幼木なので剪定というよりも「芽かき・摘心が適切ではなかった」というべきかも。

このミカン木、幸いにも枯れこむ事はなく、今は回復傾向にあります。来年には元気になるでしょう。

しかし【経験と知識の不足によって果樹の成長が1~2年ほど遅くなった】のは事実です。

高齢になった僕の「貴重な数年」をロスしてしまった。

でも何事も経験しなければ分からないという観点からすると「これは良い経験だった」ともいえます。これを修正するため本気で知識を吸収したからです。「テキトーだったのが少しマジになった」と。

「知ってる事と出来る事は別のこと」
これは【経験】の重要さを表す言葉です、世の中のどんな分野でも通用する普遍的な言い回しだと思います。

いかなる分野でもそうでしょうが、頭で学習した事が実際の現場でそのままバッチリと使えることは少ないものです。

その時々の場面、つまり現実は、常に流動的で変化するもの。教科書に書いてある通りになる現実など殆どありません。

「量子論的に確率によってその時どうなるかまったく分からない現実」をどうコントロールしていけばいいのか。

暴れ馬のような「現実」を馴らして確率を平均的に落とし込んでいくのは「その人の経験値」だと思います。

俗に「経験がものをいう」といいますね。

果樹剪定は経験

ミカン木などの果樹は、思ったような場所から枝を出しません。個体差もさる事ながら、「好き勝手にとんでもない所から芽を出して枝を伸ばす」という感じです。

「剪定のやり方」の教本や動画に出てくる「教科書通りの枝つき」になってくれるのは殆どないですね。てんでバラバラ。

「そこを矯正して理想の樹形にするのが剪定ですよ」
この通りなんでしょう。

でも具体的にどうすれば良い樹形になっていくのかが分からない。

学習して分かったような気になる。でも自分の果樹を見ると、どうしていいのかサッパリ分からなくなる。教わった切るべき枝が見当たらない、教わっていないわけの分からない枝だらになっていて、切っても良いのか悪いのか・・・

ゴチャゴチャした不要で邪魔な枝が沢山目について、それを切っていったらスカスカになって葉が少なくなり、樹が貧弱で小さいまま生長が止まってる・・・・

枝を切ればそこから分岐して強い芽が出るし日当たりも良くなり成長が良くなるのは分かる。でも枝を切ると少ない葉がよけいに少なくって成長が止まってしまう。この矛盾をどうしろというのか・・・

・小さな苗木なので葉数を確保するため枝は切りたくない
・そうすると誘引して活用すら出来ない変な枝が増える
・枝が増えると主枝にしたい枝が強く育たない
・でも枝を切ると葉が減って育ちが悪くなる

どうすれば・・・・

園芸経験1~2年の初心者はこうなりがちだと思うんですが、どうなんでしょうか。

これを克服するにはやっぱり経験しかないと思うんですよね。ベタですが。

矛盾を均してバランスを保てるようになるにはある程度の年数を費やすしかないと。まあ何でも同じでしょうけど。

【苗木は剪定は控えめにして「芽かき」「摘心や捻枝」でコントロールするもの】
そういう事は実際に自分の木を育ててみないと具体的に理解できなかったと思います。

「春芽夏芽秋芽の区別」「切るべき枝の見分け方」「伸ばしたい方向に枝を出させる切り方」「暴れそうな枝の抑え方」「主幹と主枝を太くするやり方」「全体に日光が当たる樹形の作り方」「効果的な施肥と防除」
そんなことも、手探り状態で失敗を重ねつつ2年ほどかけてやっと理解できつつあります。

色々な意味で「来年からが果樹育苗の本番」そう感じます。

下の画像は温州みかん。植え付けた年の夏の様子。

スモモ(貴陽)

2年経過して、翌新春の剪定を待つ様子。

剪定に失敗したみかん苗木

翌年この温州ミカンは試食用に少し実をならす予定ですので、伸びた夏枝を切る程度の弱剪定にしておくつもりです。

剪定の時期は普通は3月ですが、奄美では気候的に大寒から立春までの1月後半くらいの剪定がベターだと思っています。寒害はないし2月には芽吹きますので。